第6章 終わりの足音
雑踏の中
行き先も思いつかないまま、ただ歩いた
彼女の残像が頭を埋めて、過去の自分が頭を過る
彼女は、……あの日の俺だった
どうしようもない想いを、一度だけ言葉にしたことがある
それはもう、今では後悔でしかないけど
消したくても消えないこの記憶に、俺はいつまで囚われるのだろう
泣かしちゃったな……傷付けた
わかってたじゃん。俺に関われば、不幸にさせてしまうこと
なのに、どうして早く……あの部屋を出て行かなかったんだろう
「マサキ?」
俺を呼ぶ声に、俯いた顔を上げた
一瞬、脳裏に浮かんだ顔を慌てて消し去る
……こんな……偶然……ううん、奇跡?
起こるわけないのにね
しょーちゃん、俺
何処か俺と似てる貴方に、惹かれてたんだと思う
一緒にいる時、少しでも和らいだ気がしたんだ
いつまでも消えない傷痕が、もしかしたら、こうしてずっと一緒にいれたら
俺も、幸せになることを赦されるんじゃないかって……
そんな幻想、抱く事さえ罪だった
コレが現実なんだ
「なぁ……どうして
いなくなった?
俺の気持ち……わかってんだろ……」
「……」
「今、何処に……誰といるんだよ」
潤んだ瞳
掴まれた肩に伝わる想いの深さ
「……誰ともいないよ。
ごめんね。ちょっとだけね、寄り道してたんだ」