第6章 終わりの足音
久しぶりに会うマサキさんは、なんだか少し痩せた気がした
ちゃんとご飯食べてるのかな
私をソファーに促すと、キッチンでお茶を入れてくれてる
こんな時間にここに来たことにも触れず
優しい笑顔を向けてくれる
やっと決心してここに来て、きちんと話そうって思ってるのに
言葉は喉元でつかえたまま
顔を見てるだけで泣きそうだ
「久しぶりだね。元気にしてた?」
「はい。
マサキさんは…」
「俺は、見ての通り元気だよ?」
ふふふって悪戯っ子みたいに笑って戯けて見せるけど、わかった
マサキさんは、
私が“知ったこと”に気付いてる
「あの…
私、いろいろ考えてて」
「うん」
あれだけ頭に並べた言葉達は、
本人を前にすると何の意味も持たない
この思いを上手く伝えられる自信なんてない
押し掛けて来といて、何も言えない私の代わりに
マサキさんの鼻に掛かった優しい声が響いた
「ごめんね、悩ませちゃったりして」
「え…」
「見ちゃったんだよね?
俺としょーちゃんのこと。気持ち悪かったでしょ?」
「そんな…!」
「あのね。
誤解しないんで欲しいんだ。しょーちゃん、優しいから流されたっていうか…
俺、誰とだって寝れるしいい加減だしさ。
酔った勢いっつーの?」
あんなに悩んだのがバカみたいだって思えた
頭で考えたことなんて、どうでもいいって……
目の前にいるこの人が
今見てるマサキさんが、私のすべてだ
「私、好きです。
マサキさんのこと」
目を見開いたマサキさんに、ただ伝えたくて
「ちゃん…
だめだよー俺みたいないい加減なやつ」
告白をはぐらかすような台詞も
ちゃんとわかるよ
この人が優しすぎるからだってことが
きっと人の為なら
平気で自分を傷付けてしまう
でもね
マサキさんは、もっともっと…
愛されなくちゃ
「今だって俺、やらしーこと考えてるかも知んないし。
サイテーでしょ?」
そう思ったら、
勝手に身体が動いてた
「最低なんかじゃない。
私だって考えてるよ」
マサキさんの身体に抱きつく
ドクドク、胸の鼓動が響いてる
「抱いて下さい。
私がマサキさんを幸せにするから」