第6章 終わりの足音
「スゲー片付いてんじゃん!!
それでよくメシの準備まで出来たな!!」
「そんな褒め過ぎ。
普通のカレーだよ?」
「イヤイヤイヤ!すげーわ」
俺の代わりに引越しの準備を進めてくれてるマサキ
クローゼットに本棚
予想以上に片付いてた書斎は閑散としていた
その上、カレーライスとサラダまで用意してくれてて、ちょっと感動している俺
「いい嫁になれるわお前」
「何言ってンの(笑)」
脱いだスーツをハンガーに掛けリビングに戻ると
其処には冷えた缶ビール
「いやまじで」
「……ふふ。じゃ、次の居候先でも
大事にして貰えるかな」
カレーを温めながら、
そう返す後ろ姿に、思わず動きを止めた
「言ってたな、そう言えば。
なんか住む場所のアテあるって」
「うん。しょーちゃんに会う前にお世話になってた人なんだけどね」
「ふうん。……なぁ、ソレってさ
男?女?」
その真実か嘘かわかんない話まで気になる自分自身
モヤついた感情を隠し声にした
そんな俺の矛盾に気づいてるのか、気にも留めないのか……
「えーー?
そんなの、しょーちゃんには関係ないじゃん」
「…そーなんだけどね。
ただの興味本位だよ。なぁ、実際さ
男と女、どっちとヤるのが気持ちいいのお前」
ピタリと動きを止めたマサキが
ゆっくり俺に振り返る
その眼差しは何も映してなくて…
でも、直ぐにいつものお調子者の笑顔を見せた
深く考え過ぎか?
都合良い解釈か?
俺の言葉にコイツが傷付いたなんて
「…それぞれ良さがあるでしょ?(笑)
ってか。しょーちゃんはどうだったの?俺に聞くまでもないじゃん」
「…そ…っか。だな」
愛想笑いに羞恥心が沸く
俺は何バカなこと聞いてんだ……
「はい。召し上がれ」
マサキが作ってくれたカレーライスは
歪な野菜がごろごろ入ってて、辛くて
だけど、優しい味がした