第6章 終わりの足音
結婚が正式に決まって
仕方ないとはいえ、母さんが今まで以上に連絡してくるようになった
プライベートを仕事に持ち込むのは、社会人として以ての外だという父さんも
今回ばかりは別だった
会社まで押し掛けた母さんの為に、
仕事中だというのに、応接室に呼ばれてる
この結婚は、どちらかと言えば
仕事に深く影響する事だからだ
「新居のことは聞いてるわよね。
藤堂さんの方が不動産は手広くやられてるから、ご好意に甘える事にしたから。
後は式場と来賓者の…ちょっと?ちゃんと聞いてる?」
「…聞いてますよ」
納得したはずの結婚も
いくら家の為だとはいえ、
感情の温度差に益々冷めてくばかりだった
「母さんに任せるよ。
そういうの俺よくわかんないし。
こういうのは男があんまり口出ししなくったって大丈夫でしょ。
アリサさんの希望もあるだろうし」
「それはそうでしょうけど」
「だろ?だから、俺は仕事に戻るから」
「…それはわかったけど。アナタ、
あの下品な男、まだ出て行ってないみたいじゃない。
アナタ、まだ何か脅かされたりしてるんじゃ」
「まだって何だよ。
アイツはそんなんじゃねーよ」
「何言ってるの!アナタがそんな適当じゃ。
せっかくは言う事聞いて大人しくしてるっていうのに」
「……最近会ってないな」
「あの子も漸く自覚してきたのかしらね。安心したわ」
の事も気になってた
あれだけマサキに夢中だったのに
危険を顧みず、あんな物騒な場所にひとりで乗り込むくらい……
そんなが、
母さんの言う事を素直に守るなんて到底思えない
「元気にしてる?
たまには顔出せって言っといてよ」
「何言ってるの。
アナタがもう少し家の方にも顔出しなさい!」
結局、何言っても煩い母さんに痺れを切らして
俺は適当に誤魔化して、その場を後にした
知らなかった
俺の知らないところで
色んな感情が渦巻いていたなんて