第5章 答えは始めから決まってる
「…この時間なら、ディナーも行きたかったな」
甘えた声と見なくてもわかる、計算された素振り
すべてこれで思い通りになってきたんだってわかる
でも、俺には何も響かないし、今日はもう終わりにしたい
あからさまに態度に出せない立場に内心苛つく
「夜は…ほら、さっき紹介したマサキと先約で」
「…あの人と?」
「そう。だからごめんね」
「……残念」
「アイツともこれからはあまり会えなくなるだろうしさ…」
「…そうね。昔からのお友達なの?
一緒に住むなんて仲いいんだ…」
「まぁ、成り行きっていうか…」
「そう…」
不満げな彼女の視線を逸らし、曖昧に笑ってみせる
マサキの身元は知らない
偶然、あの店に居合わせただけの存在
……正直、気にしてないわけじゃなかった
ホームレス生活を送るアイツには、
人には言えない過去があるのかも知れないけれど
「翔さん?どうしたの…」
「いや。なんでもないよ」
なんでもない
アイツの過去を今更知ったところで
何の意味があるっていうんだ
すべては、決められた未来を進むだけなんだから
彼女を家まで送り、部屋に戻ると
いつもと何ら変わらないマサキがおかえり、と迎えてくれた
ドアを開け迎えてくれたその笑顔だけで、ドクンと波打った心臓に困惑する
この生活に終わりが近付いてるせいか
変わらないコイツの態度に頭にきたのか
「マサキ」
「しょーちゃん?」
手首を掴み、身体を引き寄せ、……壁に押し付けた
ホントはそんな風にしたかったわけじゃないのに
されるがままのマサキを良いことに乱暴に抱いた
「ぁ……っ、んあッ…しょ、ちゃぁ」
キツく残した爪痕も噛み痕も
耳奥にこびりつくような甘い声も
この現実を確かだったと、ただ残したくて
「流石に最初のデートでヤるわけにはいかないしさぁ
代わりに相手してよ」
「……っ、あぁ…ん!」
コイツがどんな想いで抱かれてたかなんて
俺は考えてやる事も出来なかった