第5章 答えは始めから決まってる
いつもなら万全の体制で、
すべて予定通りに進めたい事態だけど
……想定外だっただけに
運転しながら、真っさらなタイムスケジュールを埋めていく
女子ウケしそうなメシ屋……
高級ってだけじゃ、このお姫様は納得しないだろうし
雰囲気的にもちょっと砕けてた方が……まだ若いしな
会社の子が噂してた店を思い出して、とりあえず店は決定
その後は適当にドライブ
あとは雰囲気のいいカフェでも行ってお茶したらいいだろ
当たり障りなく、暗くなる前に家に帰せば問題ない
ある程度の線引きはしておきたい
面倒だけど、これもある意味仕事だ
唯一、助かったと思えるのは
お喋り好きな彼女は一方的に話してくれるから
こちらは頷いて笑っとけばいい
会話を考えないでいいから、余計な頭を使わないで済む
予定通りに食事を済ませ
車を走らせ、ちょっと寄り道して買い物して
彼女お気に入りのカフェでお茶して
まだ帰りたくない!って我儘を言い出したのを、やんわりはぐらかして
彼女の家までの車中
お姫様のご機嫌な様子に、
とりあえずは無事業務完了出来そうで安心していた
「今度はいつ会える?」
「色々立て込んでるから…
でも、今度は俺から連絡するよ」
またいきなり来られても困るしね
「ホント?約束ね?」
「うん(笑)色々決めなきゃなんないしね…」
「新居はね、パパが用意するってうるさいんだけど……大丈夫?」
「その前にご挨拶しに行かなきゃね。
こんな形の結婚だとしても……」
政略結婚、っていうのを
ちゃんとわかってんだろうな
俺の言葉に黙って頷く
世間知らずのお嬢様でも、
その点は小さい頃から自然と理解してた事だろう
「私ねぇ、
こんな形でも、翔さんと結婚出来るなんて嬉しい。
聞いてると思うけど…私、一目惚れだったのよ」
さっきまではしゃいでた彼女が、途端に俯く
もしかしてお喋りなのも緊張はぐらかすため?
それはそれで可愛いなって素直に思える
「私、翔さんに本当に好きになって貰えるよう、頑張ります」
確かに、本当に好きになれれば
こんなに都合いい事ないんだろうけど
正直、自信ないな