第5章 答えは始めから決まってる
パタンとドアが閉じたと同時に、安堵の息が漏れる
最低だな俺は
マサキに煽るような事をしておきながら、曖昧な態度のままで
タダの性欲処理だって言ってやった方がどれだけマシか
行為の後の脱力感以上に、空っぽな中身をどうしようもなくて
休日なのも後押ししてアルコールを身体が欲する
寝室のドアを開け、冷蔵庫にあるビールを開けようとリビングに向かったと同時に
タイミングよく鳴り響いたインターホン
まさかの訪問者に息を飲んだ
何故ここに?
居留守を使ってもいいものを、騒ついた胸の奥に芽生えた感情
彼女に会ったら
マサキはどんな顔をする?
どこまで狡いんだよ俺は
自覚してやってんだからタチ悪い
自分がされる側なら、絶対許せないだろうに……
バスルームに居るマサキを想像しながら、
ただ、それだけの理由で
突如現れた来客を、部屋に招き入れた
「急にごめんなさい。
なかなか連絡ないから会いに来ちゃった」
「いや、本当にわざわざすみません。
俺、寝起きで…
準備するんで待って貰えますか」
絶対に自分じゃありえないシチュエーション
婚約者とはいえ、何も知らない。心を許したわけでもない
そんな他人を自分のテリトリーにいれるなんて……
……そういえば、アイツは初対面で此処に連れてきたよな
本当、
出会いから何もかも
想定外のことばかりだ
服を着替え、お茶を入れて
彼女とテーブルを挟み向かい合わせで座った時
ドアの向こうに音が響いて
マサキがバスルームから出た事に気付く
近付く足音に耳を澄ませ、鼓動が速まるのを感じながら
その一瞬の表情を逃すまいと
ドアが開いた瞬間、ゆっくりと振り返った
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