第5章 答えは始めから決まってる
「そ、か。それなら良かったわ……
お前さえ良けりゃ、ココ住んだらいいって話までしようと思ってたんだけど」
「えー?
そんなの無理でしょ。俺、家賃なんか払えないし!」
「イヤ、まぁ……そうだよな」
そうだよ、って大きな口開けて笑うマサキに合わせて、俺も笑う
ほんの少しだけ何処かで期待していた
俺の婚約話にコイツが動揺してしまうこと
そんな事あるわけないのに、思い上がりもいいとこだ
仮にもしも、マサキがそんな態度を見せたとしたら、俺はどうする気だったのか
……何も、出来ないくせにな
「しょーちゃん、片付けしとくから
お風呂入っておいでよ」
空の容器を手に立ち上がった背中を目で追う。
俺のシャツを着たマサキの姿も
この部屋じゃ当たり前の光景になっていて……
今じゃ、部屋の事も
俺よりコイツの方が把握してたりして
冷蔵庫の中身だとか、服の場所も爪切りなんかの場所もさ
いつの間にこんなに、俺の生活に浸透してたのだろう
「ん?しょーちゃん……?」
洗い物をしてるマサキの背後に立つと、そっと腕を回し……抱きしめた
「ちょ、しょーちゃ…濡れちゃ、…」
シンクで転がった泡だらけのグラスが、水を弾いて
それを気にした素振りを見せたマサキに、頭で考えるより先に身体が動いてた
無理矢理頰を包み、後ろを向かせて唇を重ねる
ん…と苦しそうに声を漏らすマサキを至近距離で見つめたまま
また角度を変えてキスを繰り返した
迷いを含んだ瞳の色が、伏せられた瞼に隠されて
そのまま、俺の腰に腕が巻き付く
お互いの舌が絡み合い、色付いた音を立てる内に
グラスに当たる水音も、いつしか気にならなくなっていて……
貧欲に求めながら、渇いた身体に
確かに今、一緒にいる痕を刻み込んでた
「あ…っ、ああっしょ…ちゃ、っ…」
感じる姿が見たくて
喘ぐ声が聞きたくて
もしもお前が、俺を求めてくれたなら
何か変わるかも知れないのに……