第5章 答えは始めから決まってる
「コレ……懐かしくない?」
そう言ってしょーちゃんが渡してきた袋には
匂いでわかってたけど、牛丼が2つ入ってた
「…ああ、ほんとだ。
しょーちゃん覚えてたんだ?(笑)」
「店の前通ってさ、そー言えばって。晩飯に丁度いいと思って」
「うん」
しょーちゃんが着替えてる間に、テーブルの上にご飯の準備をした
玉ねぎの味噌汁を作ったら、大袈裟に喜んでくれるから、なんだか擽ったい
こんなの、大したことないのにね
「やっぱいいな。
こうしてメシ食うの」
「え…?」
「ひとりで食ってもさ、美味くないだろ。やっぱ」
「そうだね」
しょーちゃんと出会ったのは、駅前の牛丼屋
お金がなくって食い逃げした俺の代わりに支払いしてくれた
そんな人として最低な俺を、
しょーちゃんは家に泊めてくれたよね
こうして今も一緒にいるのが、ホント不思議だ
「マサキ、俺。
婚約決まったから。この部屋も近い内に出なきゃなんない」
味噌汁のお碗を傾けるしょーちゃんを黙って見てた
わかってたこと。最初っから全部
「婚約か……おめでとう、だね。
知らなかったな。そういう人いたんだね」
「数回会っただけだけどな」
空っぽになったお碗がテーブルに置かれて、同時にふぅ、と小さく息を漏らした
しょーちゃんがお金持ちな事は、このマンションだけでもわかる
……そーゆうことなのかと思った
“だから”どっかで似てると感じたんだって納得する
「俺、明日にでも出てくよ。色々邪魔だよね?」
「……そんなに急じゃなくていい。
新しい部屋決めるのもこれからだし。俺片付けんの下手だからさ、手伝って貰えると助かるし」
「……そうだね」
「だろ?頼むわ」
片付けなんて、俺じゃなくってもどうとでもなる
俺がココにいる理由を、しょーちゃんは作ってくれてるんだ
それなら俺は
しょーちゃんが余計な心配しないで、ココを出て行けるよう
理由をあげるね
「実は俺もね、前から一緒にいたいって言ってくれてる人いんの。
そこ行こうと思ってたから。
だから……ちょうど良かったね」