第5章 答えは始めから決まってる
「なぁ、今日ちょっと外出ないか」
ご飯を食べ終わって片付け始めた俺に、
しょーちゃんは突然、思い付いた様に声を上げた
近所のコンビニとかスーパーに買い出し行ったり、
冷蔵庫が空っぽだからって何度か外食したことはあったけど
目的も無しに何処かへ行こうという誘いは初めてだった
「いいけど、何処か行きたいとこあるの?」
そんな風に聞きながらも
何処でもいいから、一緒に出掛けたいって
しょーちゃんの気持ちは伝わってた
「…ないけどさ。
お前はどっか行きたいとこないの?」
「…じゃあねぇ。久しぶりに身体動かしたい。
そんで美味しいもの食べたい!」
俺の提案にしょーちゃんも頷いてくれて、ふたりで出掛ける準備をした
寒いからって、俺のボロボロのジャケットじゃダメだって煩く言われて
しょーちゃんのコート借りたら、
なんで俺より似合うんだよ、って口を尖らせるから、またふたりで笑う
しょーちゃんの運転する車の助手席でくだらない話で笑って
ラジオからは知らない英語の曲が流れてる
なのに懐かしいような心地いい声
まるで俺らみたいだね
何にも知らないのにさ、何故だか居心地がいいの
こんな事を思う自分にも戸惑ってしまうけど、決して口には出さないから…いいよね
俺のリクエストでバッティングセンター行って、久しぶりだったから、俺もあんま打てなくて
しょーちゃんに下手くそってすっごいバカにされた
じゃあ、しょーちゃんやってよって交代したら
途中で腰が攣ったって大騒ぎして、
笑い事じゃないのに、お腹が捩れるくらい笑って叩かれた
ホントはこの後、
ボーリングも行こう!って車ん中では計画立ててたけど流石に無理だった
「クソ…腰さえ攣らなきゃな。
ボーリングは絶対勝てたのに」
「ホントかなぁ?(笑)」
「信じてねぇな?次だ!今度出掛けた時リベンジだからな」
「わかったよ。約束ね」
子供みたいにムキになるから可笑しくて、自然と取り次いだ約束
叶えられる保証もないのに、
そんなの、ふたりともわかってるのに、
こんなくだらないことでも、
何か形にしておきたかったのかも知れないね
ふたりで過ごす何もかもが、
終わりに近づいてんだな、ってジワジワと感じてた