第5章 答えは始めから決まってる
腰にバスタオルを巻いたままリビングに戻ると
マサキはフライパン片手に何かを焼いていた
コーヒーの香ばしい匂いに混じったバターの匂い
おそらくフライパンの中身はお得意のオムレツだろう
「お前シャワーいいの?」
「行くよ。……しょーちゃんお腹空いてるでしょ?
先に作っといた方がいいかなと思って」
「じゃ、あとやっとくから
お前も行って来いよ」
「……もう出来るから」
不自然に開いた間に、信用してないなって思いながらも
実際その通りだから、
せめてこれくらいはって、マグカップと皿を棚から出した
「なぁ、どうかしたか?」
忙しなく動いてる後姿に声を掛ける
んー?なに?と振り返った顔はいつもと変わらない
気のせいなら良かったと思った
俺の昨晩からの不自然な行動に、
コイツがまた余計な事考えてんじゃないかって不安が過る
「出来たよ!
しょーちゃん食べといて。俺、シャワーしてくるから」
「…いいよ。待ってっから」
「……うん、ありがとね。
それなら先食べるよ。熱いうちのが美味しいもんね」
白い皿に乗ったオムレツは、
ココに来て最初に作ったモノと比べたら雲泥の差だ
お世辞じゃなく、美味そうに出来てる
「食べないの?」
「食べるよ。いただきます」
出来たてのオムレツといれたてのコーヒー
立ち昇る白い湯気は、幸せの象徴の筈なのに
向かい合わせに座ったマサキが、楽しそうに笑う度
なぜか胸が痛んで、
こんなに側にいるのに遠くに感じた