第4章 ありふれた日常
マサキと居たいと思って、この先を考えるよりも先に過ぎったのは
やっぱり、妹のことで……
弾んだ笑い声が部屋に響く度、後ろめたさと罪悪感に苛まれる
「お兄ちゃん食べないの?」
「ありがと。食べるよ」
先にテーブルに着いたふたりに笑顔を見せ、普段通りを装う
に気付かれることはないだろうけど
俺らに身体の関係があるなんてさ
コイツだっての気持ちは気付いてるだろうから
そこんとこはちゃんと合わせてくれるだろうけど
「ホントちゃん、料理上手なんだね。
いい奥さんになれるねー」
「そんなこと…ないです」
マサキの軽い言葉にも、赤く頰を染めて…
お世辞でもなんでも、好きな人に言われちゃそりゃ嬉しいだろうけど
「お兄ちゃんも美味しい?」
「ああ。美味いよ」
「良かった!」
いくら生意気と言えど反抗期特有の可愛いもんだったし
俺だって……妹を泣かせたいわけじゃない
「明日は来れないんだけど…
煮物とか冷蔵庫に入れておくからちゃんと食べてね。
あと、怪我の消毒も…」
「ありがと。
ちゃんとやるよ。消毒も俺出来るから」
本音は毎日だって来たいんだろうけど
母さんの手前、それも不自然だし
アイツは父さんにも母さんにも溺愛されてるからな
……本人はわかってないみたいだけどね
数時間ウチで過ごして
名残惜しそうには帰ってった。
ドアが閉まった途端に、自然と大きく漏れたため息に
マサキが、ふふ、っと笑う
「大丈夫だよ。
バレないようにしたらいいんだよね?俺らのこと」
「…ああ。
その方がアイツの為にもいいだろ」
「……だね」
曖昧な関係は変わらない
その上、妹を騙してる
俺らの関係は考えちゃ駄目なんだ
なのにさぁ、マサキ
性格上無理なんだろな
結局、頭ん中でお前の事ばっか考えてるよ