第4章 ありふれた日常
早起きして作った料理
マサキさんが美味しいって言ってくれた卵焼き
お兄ちゃんの大好物も
……全部ひとりでってわけには行かなかったけど
重箱いっぱいに詰めた
お気に入りのワンピース着て、髪だっていつも以上に念入りにブローして
そんな私を、お母さんが不思議そうに見る
「お兄ちゃんの所に行くのよね?」
「え、そうだけど…
これ!とにかく持っていってくる!
朝から届けないと、お兄ちゃんすぐ外食とか出前で済ませちゃうから!」
嘘ではないよね、って思いながら口にして
マサキさんは中華専門だって笑ってたし
きっと家庭料理なんかは、食べてないはずだから
喜んでくれると嬉しいんだけどな
「行ってきます」
浮かれた気持ちが声に出ないように気を付けて、家を出た
怪我をさせてしまった事は後悔してるけど、マサキさんがお兄ちゃんの所に帰ってきたのは嬉しくて……
今すぐに気持ちを伝えようだなんて思わない
ただ、今は
マサキさんの側にいたい
インターホンを押し
ドアの前で数秒
招いてくれたお兄ちゃんの肩越しに
笑顔のマサキさんが存在していて
ただそれだけで、
ぎゅっと心臓を鷲掴みされたみたいに
私は苦しくなって
なのに、すごく幸せで
ああ、やっぱりこの人が好きなんだって
今日も思う