第4章 ありふれた日常
「は...、んっ...しょ、ちゃ...」
何度も重ねた唇を、首筋に移し
浴びたままのシャワーを避け、マサキをバスタブに座らせる
屈んだまま、胸元へと舌を這わせ
開いた脚に手を伸ばした。
拒むように、肩に添えられた手に力が入るけど
それ以上に強引に熱を与えた。
「な、んでっ......同情とか
そんなのいんないからっ、俺......」
目線を上げた先には、
怒ったような複雑そうなマサキの顔
だけど、
さっきまでの冷めたような見下す目線は存在しないから
少し、安心する。
「同情なんかでしねーよ。
コンナコト」
じゃあ、何故かだなんて
ハッキリとはわからないけど
何となく、こうすることが自然な気がしてた
気まぐれや勢いで始まった時とは、明らかに違う、何か
いつからか感じた、何処か似てる空虚感
それはたぶん、俺だけじゃないはずで
闇を抱えて
自分を演じて
俺らは、何処か似てるから
「じゃ、なんで......」
されるがままのマサキから、弱々しい掠れた声が聞こえて、
掌の力が抜けた
答えはわからないまま、ただ感じた通りに、言葉を紡ぐ
「俺ら、一緒にいたらいいんだよ。
理由なんかなくてもさ?
たぶんそれが、正解なんだって思う。……それだけで充分じゃん」
俺らの淀んだ空間を
流すシャワーは雨のよう
例えそれが幻でも
薄汚れた偽物のフィルターでも
それで、いいんだ
とりあえず、今は。
「ココに居たらいいんじゃない。
ココに居て欲しいんだ。
理由がないってんなら、弁償の次は怪我のせいにしたらいいだろ」
ふっ、と緩んだマサキの顔は
笑顔を見せたワケでもないのに
酷く懐かしくて、優しい気がした