第4章 ありふれた日常
――…ゾクリとした
顔だけ振り返って
擡げた首で、
流すような視線を向ける
その表情だけで
そういうことかと悟った
ココに来たのも、
変わらない素振りで過ごしていたのも
全部、の手前
演じてくれていたもの
「またあんな場所で
俺の名前晒されても困るんだよね。
客つかなくなっちゃうでしょ」
「……そう、だよな。
悪い」
「しょーちゃんに謝られてもね。
今日だって、大切なお客様と約束あったのになぁ俺」
意味ありげに放つ言葉は
何故か、ズシンと胸に響く
「……謝ればいいってもんじゃないけど、ホントにごめんな。
怪我までさせてさ。
ちゃんと責任は取るから」
マサキの瞳が、
相変わらず冷ややかだから
居たたまれなくて、
ぎゅっと掌を握り締めた
「……責任て?」
「金とかさ…
怪我させた分、仕事にも支障するし、今日の分もきちんと払うし。
他にも言ってくれたら何でも……」
「何でもしてくれるって言うの?」
言葉じゃなく、黙って頷いた
数秒、マサキは俺を見つめ
低い声で、冷たく言い放った
「何でもって、じゃあさ」
薄く開いた唇を見つめながら、
乾いた喉に飲み込んだ唾は、異物みたいに苦しく通る
「今日、発散出来なかったからさ。
俺、溜まってんだよね。
しょーちゃん、かわりにシてくれる?」