第4章 ありふれた日常
近寄ろうとしたを寄せ付けないよう、わざと冷たい視線を向けた
じわじわと掌に走る痛み
気付いてなかったけど、
思った以上に出血してる
左手で隠すように押さえ、その場を離れようとした
「マサキさん!怪我っ
病院行かなきゃ」
「いいよ。大したことないし」
「……だけどっ」
背中を向けようとした俺に、ちゃんの声が響く
ほんの気まぐれだったんだ
変になつかれても困るんだって
「まじで勘弁して。
誰のせいで怪我したと思ってんの?
こんなとこで彷徨いて、
何かされたって仕方ないんだからね」
「……ごめんなさい私っ」
「あーもー、
ホントだったら、
今頃イイコトシてたのにな」
顔色の曇るちゃんを見て
内心、ホッとする
「オンナ待たせたまんまだから、
帰んなきゃ俺」
「……帰るの?」
「そ。ホテルにね待たせてんの」
ふふ、っと笑うと
何か言いたげで……
気付いたけど、
ホントにね。迷惑なんだ
俺を探して、どうすんの…?
こんな危ない目に合いそうになって……
俺なんかのために……
「早く帰んな。
それともちゃん、
わかってて着いて来てたの?」
「ちが…っ」
「でしょ。それなら2度と」
そこまで言った時、ちゃんは
俺の胸に飛び込んできた
「怖かったけど、
それでも私は、マサキさんに会いたかったの!」
ぎゅっと腰に回された腕が、
見下ろした肩が、震えてる
「マサキさんお願い」
「……」
「帰ってきて!」
帰る…って、何処に?
あの部屋に、戻れっていうの?
……何故かしょーちゃんの笑顔が浮かんだ
帰る意味なんかないのに
「離してよ。
だから、俺はっ……っ……」
掌の痛みで
腕まで痺れて
思わず声が漏れた
「マサキさん!
救急車呼ぶからっ」
「やめろって!」
そう怒鳴ったら
泣きながら電話をかけた
「もしもし!?
お兄ちゃん!!助けて」