第4章 ありふれた日常
ぼんやりとした頭が
少しずつ意識を取り戻してゆくと
直ぐに、普通じゃない現実に気付いた
自由の利かない拘束された身体
寒さのせいじゃない
止まらない震えは、恐怖のせいだ
「ん……んンッ…」
塞がれた口から漏れる、声にならない声
聞こえるのは
知らない話し声と、楽しそうな笑い声
ますます恐くなるばかりで……
勝手に涙が溢れる
私……どうなるの
「前に見かけた……そうそう、あの子。
結構可愛いしさ~
簡単に着いてきたぜ?」
誰に電話してるの……?
「お前も来いって。
最近、退屈だって言ってたじゃん。
いい暇潰しになるだろ」
背筋から、
凍り付くような感覚
叫びたくても、逃げたくても
思うようにならない
「あれ…、起きた?」
話し声が途切れ、近付く足音
首を振って、表情だけで必死に訴える
「大丈夫だよ。
マサキなんか忘れるくらい、楽しませてやっから」
私の目の前に屈んだ男は、
ただ愉しげに笑顔を浮かべ、
涙で濡れた頬に、冷たい男の指先が触れた
「んんんっ…」
振り払いたくても、
何も抵抗出来ない
その時だ
ギイッ…、と男の背中越しにドアが開いて
私に触れた男の手が離れ、後ろに振り返った
「お、来た…
ちょうど今から始めようかって…」
現れた仲間の存在に
絶望と恐怖で、縮んだ身体の震えは止まらなかった
「……可哀想に、
震えちゃってんじゃん」