第4章 ありふれた日常
建ち並ぶ雑居ビルのひとつ
促されるまま後を着いて、エレベーターに乗り込んだ
賑やかな繁華街とは裏腹に、静まり返ったロビー
想像とは違う閑散とした雰囲気に、嫌な予感がした
「マサキさん、ホントにココにいるんですか?」
不安を誤魔化すように、
前を歩く男の人に声を掛けた
「いるよ。
どうしたの?会いたくないの?」
相変わらず、柔らかい笑顔で私を見てるけど
やっぱり…おかしい
奥に見える薄暗い通路に
思わず足を止めた
「やっぱり…私……」
後退りしながら、
エレベーターに戻ろうとしたけど
今さっきまで、
人の良さそうだったその人は
苛立つように顔を歪ませ、
突然、
私の手首を掴んで、乱暴に引き寄せた
「きゃっ、……やだっ!」
夢中で振り上げた片方の手も
虚しく宙を掠って
口を塞がれたと同時に、
強い痛みをお腹に感じて、意識が遠退いた