第6章 体育祭
『っ、う…そ…』
轟「嘘じゃねえ。けど…お前はそうじゃねえんだろ?だったらこれからでいい。少しずつ俺を意識していってほしい」
『っ~~そんなの、ずるい』
轟「そうなのか?」
轟くんは天然だから余計にタチが悪い!よく言えば自分の感情を、ちゃんと表現できる。悪くいうと、天然誑し。でも…きっと、轟くんは本気で私に伝えてくれているんだよね。そんな人の思いを、はぐらかしちゃダメだ。
『…まだ、私は好きとかそういうの、わかんないから…もうちょっと待ってほしい』
轟「ああ、待つ。お前の答えがいい方に向くように俺もがんばる」
『と、轟くんは、私のどこが好きなの?』
轟「……ヒーローだって、言った」
『え?』
轟「俺を、ヒーローだとお前は言った。マスコミが侵入してきたとき」
『…それだけ?』
轟「俺にとっては‘それだけ’のことだった。あん時から…お前のこと考えるたびに、少しだけ…忘れられた。多分これが、好きってことなんだろ」
『…ありがと』
轟「?どういたしまして」
なんだか恥ずかしくなってしまってお礼を言うと、轟くんはきょとんとした顔で返した。それからしばらく沈黙が続いてしまって、轟くんの私を見つめる瞳に…いつもはクールな瞳が、今は熱を持っていることに気づいてしまって耐えられなくなった。
『…に、二回戦!始まっちゃうから、いこ!?』
なんだか私だけがドキドキさせられてるような気がして恥ずかしくなり、咄嗟に話題を変えようと試みた。すると、轟くんはふっ、と優しく笑った。
轟「焦るな。ああ、行くか」
初めてあんな風に笑った轟くんを見た。それを見て少し胸がキュンとなったのは仕方ないと思う。
轟「マナ」
『ッえ?!』
轟「って呼んでもいいか?」
『もうこれ以上ドキドキさせないで…』
轟「ドキドキさせなきゃダメだろ」