第6章 体育祭
「甘風マナ」
自分の試合が終わった後、控え室に戻るべく廊下を歩いていると、ふいに後ろから声をかけられた。知らない声だ。誰だろう?と後ろを振り返ると、その人物は思っていたより近い距離にいた。その主は
『!…え、エンデヴァーさん!?』
私は思わず一歩下がってしまった。No.2ヒーローがなぜこんなところに?突然すぎて一瞬本当に私の名前を呼んだのかと疑ってしまった。しかし彼の鋭い目はたしかに私を捉えている。私に何か用があるのだろうが、何も心当たりはない。
そういえば、彼は轟くんのお父さんだよね…?たしかに、目の色や髪もそのままだ…顔のパーツ自体はあまり似てないかも?なんて呑気に考えていると、エンデヴァーさんがこちらに近づき声を発する。
エ「第一回戦突破おめでとう。実に素晴らしい戦いだった」
一瞬構えたが、第一声がただの祝福の言葉だったことに安堵する。
『あ、ありがとうございます。でも、本当に頑張らなきゃいけないのはここからですから』
エ「だろうな。このままいけば、焦凍とあたる」
『息子さんにも、負けません』
エ「そうか、それならあいつはそれだけだったということだ。俺の力を受け継いでおいて使わないなど、愚かなことだ」
さっき聞いてしまった轟くんの話。さっきの話だと、エンデヴァーさんは最強のヒーローを作るために個性婚をして、子供をもうけたってことになる。轟くんは彼への反発のために自分の力を半分も使わないのに…それが愚かだなんて、原因を作った張本人が言うのか。そう言った彼の目は、轟くんと同じ色であるはずなのに、暗く澱んでいた。
思わず恐怖を感じてしまった。この人は、ヒーローなのに…
そんな私の様子に気づいてか、彼は私の話に元に戻した。
エ「君の個性は強い。聞けば治癒もできるとか。戦闘にもサポートにも使える個性…素晴らしいよ」
『…そう思っていただけるのなら、光栄です』
ただ私を褒めに来ただけ…にしては何か言いたげな雰囲気に疑問を持っていたが、彼の次の言葉に私は固まってしまう。
エ「甘風マナ、俺の息子…焦凍の嫁になれ」
『………え?』