第6章 体育祭
上鳴サイド
なんでそんなずるいこと…期待させるようなこと言うんだよ、マナのバカ。俺の気持ちなんて全然知らないくせに。…いや、知らないから言うんだろうな、ホントにずるいやつ。
俺は…彼女が欲しい欲しいと日頃から言ってるけど、本命じゃなきゃ嫌だ。
その本命は言わずもがなマナだ。
普段から軽い男みたいにしてるけど、本当は真剣にマナに好きだと伝えたい。けど…やっぱマナはそんなこと望んでないってわかるから。俺がそう言ったら、絶対こいつは悩んじまうし、なんなら俺に申し訳ないって泣くと思う。俺は別に、マナを困らせてまで、明確に好意を伝えたいわけじゃない。ただ、俺はこいつのそばに、1番そばにいたいだけだ。
マナが俺をすげえ大切に思ってくれてることはわかってる。だから俺はあえて何も言わずに、こいつにとって1番安心できる【幼なじみ】っていうポジションに居座ってる。…俺もずるい男だ。
でもだからこそ、俺は安全な幼なじみでい続けなきゃなんねえ。
こうして俺の横で安心して眠るこいつを、壊しちゃいけねえんだ。柔らかい体が俺に密着してる。それだけでもクラクラするのに、たまに身をよじるからたまったもんじゃない。
あんな顔するから思わず泊まってけって言ったけど、やっぱしんどいわ。言わなきゃよかったという後悔半分、役得だという優越感半分ってところだ。
『ん……』
「…ごめんな」
俺は、マナに謝る。そして、おでこき軽いキスを落とす。
好きになって、ごめん。
そんな気持ちを込めながら。