第13章 視線
朝 肌寒さを感じて起きてみると
もうベットには王様はいなかった
いつも王様が尻尾にくるんでくれているから夜はとっても暖かい
昨日の夜王様が言っていたように
宴の準備か窓の外から入ってくる音はいつもより騒がしい
朝食をいつものように一人で摂り
窓の外を眺めていると中庭の端に小さな噴水があるのが見えた
あんなとこに噴水?
中庭は石壁で囲われていて綺麗に手入れされているのに
石壁の外側 大きな木がはえている下に小さな噴水が見えた
その回りは草が生い茂り
大きな木の下で一日中日陰になっているためか噴水の枠には苔がびっしりついている
水は流れてはおらず 貯まっているだけなのか濁っているように見える
何だか普通から外れた異質で忘れられた物
『アタシみたい…』
何だかわからないけどあそこに行ってみたいな
何処から行けるんだろ?
上から見ても道などなく勿論扉などはまったく見えない
王様に後で聞いてみよ
これから起こることなど知らなかったアタシはそんなことをすっかり忘れてしまっていた。