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温もりに包まれてて 【贄姫と獣の王】

第9章 天啓 ~生贄~


王様side

天啓…

またこの日がやって来た
誰にも見つからぬ様
地下の祭壇の間に行く

誰にも知られてない私の秘密
半分は人間 半分は魔族
どちらにもなれないこの身

瘴気の晴れる天啓の夜には
人へと戻るこの姿を
暗闇に隠し 息を潜めて明日を待つ

生贄の娘は秘密の通路から逃がし
人である自らの血でこの部屋を汚す
供儀を行ったと臣下どもに思わせる為
私なりの天啓の儀式

だが 今回は何故だかいつもと違う
生贄に差し出された娘
シュリのせいであろう
気の迷いと思っていたが違うようだ
"手放したくない"
はじめてそう思っていた…



扉が開き アヌビスがシュリを連れて来たのであろう
さぁ 何も考えずいつもの"儀式"をしよう
気の迷いであったと思い直そう

そう思ったとき


ドサッ
「し 静かにしろ生贄の娘」

賊か!
何処から入って…兵は何をしている!

「ここには従者は入ってこない事は調べが付いている ここでお前と入れ替わり王を待たせてもらうぞ」

シュリ‼

ドンッ! ザクッ
チッ!人の姿では夜目が効かん


蜥「王の従者か⁉ 邪魔をするな!
あんな人間に荷担するような腰抜けの王など捨てろ!」

腰抜けか…
確かに賊の言うことに間違いはないな
フッ…
自傷気味なため息をつくと

『王様は腰抜けなんかじゃない‼』
その声に驚き見上げると
手を広げて私を庇い立ち塞がるシュリの姿があった

なっ!何をしている!

シュリの言葉に煽られ賊はまた剣を振り上げていた
危ない!
賊の剣を奪おうと前に出た拍子にフードが外れてしまったが、そんな事よりもシュリを守らねば!

剣を奪い反対に賊を切り伏せる
逃げようとする賊を追おうとするが腕を捕まれた

『まって!王様…だよね?…王様?』

何故わかった!
誰もこの姿になることは
知らぬはずなのに…


「わ わたしは…王などではない…
こんなに弱くて 情けない王がいるものか…」




魔力も権力も持たない只の人
王様などと呼ばないでくれ…
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