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温もりに包まれてて 【贄姫と獣の王】

第9章 天啓 ~生贄~



スルリとアタシの横をすり抜けていく人影
フードがフワッと外れて真紅の瞳と漆黒の髪の男の人が見えた

ドン!グサッ!

男と人が蜥蜴の人の剣を弾いて奪い
反対に刺していた

蜥「ウッッ…くそっ…」

蜥蜴の人はそのまま走り逃げ出していったので 男の人は追おうとしていた
アタシはその手を掴んで

『まって!』







『王様……だよね?…』

目の前の"人"は
漆黒の長い髪に角を生やしている男性
王様の様に綺麗な毛並みの獣の姿ではないのに何故だかこの人は王様だと思ってしまった。

掴んだ手が離れないように力をいれて
もう一度言葉をかける

『王様?』



「わ わたしは…王などではない…」

微かに震える血だらけの手を見ながら

「こんなに弱くて 情けない王がいるものか…」



『王様は弱くなんかない…アヌビスさんが言ってたよ? 天啓の次の日 この部屋は
"人間の血"だらけになってるんだって。
王様が生贄を食べちゃうから…』

持っていた真っ白いハンカチをまだ血の流れている王様の手に巻きつけながら そっと腕に触れると沢山の大きな傷がある

こんなに深い傷をつけて 痛かったよね…

傷に触れながら

『弱い人にはこんなこと出来ないよ?』

ピクッと王様の手が動いた。

『でもアタシはいいの…
この世界には帰る場所はないから…
だからお願い…王様がアタシを食べて?
優しくて暖かい王様の中に居させて…』

沢山の重圧を背負い 守っている王様
自分を押し殺して…
そんな王様の一部になれば少しはその重りを一緒に持って軽くしてあげたいな…



手を伸ばし王様の両頬に触れると
指先から温もりが伝わってきた…
金色の瞳が優しく揺れ その瞳から目を離したくなくなった



『アタシは王様の糧になりたい…』



ギュッと王様に抱き締められ
首枷と手枷が砕けちった…


ふっと力が抜け
あぁ…
最後に見るものがこの紅で良かった…





王様が首筋に顔を埋め
チクリと痛みが走った


王「シュリ…これでお前は私の一部だ
決して離れるこは許さぬぞ…」







ありがとう…王様…





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