<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第240章 貴方には敵わない ― 姫&政宗 ―
ぐいと引っ張られ、あっという間に馬屋へ連れて行かれる。
気が付いたら馬に乗せられ、政宗が手綱を持って私たちが乗る馬が駆けていた。
「風が気持ち良いだろ?」
初めて政宗の馬に乗せられた時は怖いのひとことでしか無かったけれど、今はこんなに心地良いものと感じている。
馬の背にまたがり馬を自在に操る政宗の姿は、どんな角度から見ても本当にかっこいい。
私を落ちないように支えてくれているそのからだはたくましく、ただちからがあるだけでなく領地のひとたちを守るという重責も抱えている事だって知っている。
「ねぇ、政宗」
馬を走らせる政宗に、風で声が途切れそうになりつつも話し掛ける。
「ん?」
前を向いたまま政宗が返してきたので、私はそのまま言う。
「私ね、政宗にふさわしいひとになりたいって思っているんだ。政宗の仕事に役に立てるようになりたいの。一日でも早くなれるように、政宗を追い駆けていくからね」
返事は無く、私は変な事を言ったのかと思ったけれど、私の頭に政宗がごく軽く唇を押しつけてきたのに気付く。
「…舞は既に俺にふさわしいおんなだよ」
政宗の声はごく小さいものだったけれど、私には十分聞こえた。
「俺にふさわしいし、俺の仕事の助けになっている。俺には出来たおんなだ」
こんなにも褒めてくれるけれど、私自身は全くそうだとは思っていない。
「そんなに私はすごくないよ」
風に髪がなびくのを押さえながら、政宗のほうへ視線をちらりと向ける。