<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第240章 貴方には敵わない ― 姫&政宗 ―
「政宗はいつもかっこいいし、家臣や領民の人たちの事を考えていて、とても尊敬してる。だから私はそんな政宗の隣にいて、相応しい人でありたいって思っているの。今はまだとても未熟だけど、きっと政宗に追いついてみせるからね」
政宗は今度の私の言葉に何も答えず、でも確かに笑みを浮かべた。
そして手綱をひいて馬の速さを心持ち早くしたようだ。
どこへ行くんだろう、でも、どこへでも政宗となら不安より期待が膨らむの。
いつしか惹かれるようになって両思いとなってからは、ますます何をされるんだろう、どこへ連れて行かれるのだろう、とわくわくする思いしかなくなっていた。
「政宗、ずっと大好きだよ」
馬を操る政宗に聞こえるように言うと、政宗は一言「わかってる、俺もだ」と答えてくれる。
いつ、何が、どうなるか、乱世の生き方や価値観は全く違う。
でも政宗の心にある暖かな心の感情は、現代でもじゅうぶん通じるものだよね。
政宗が遠駆けして連れてきてくれたのは、城から少し離れた丘になったところで、遠くまでの景色がよく見える。
「景色がとっても良いね」
「ああ。ちなみに万が一敵が攻めてきたら、ここで動きを観察するんだ」
「…じゃあ、今も視察を兼ねた遠出ってこと?」
私が聞くと、政宗は目を細めて「天気も良かったし、舞もあの場所に恥ずかしくていられなかったみたいだからな」とははっと笑う。
本当に政宗には敵わない。
仕事の一環とは言え景色が良いところに連れてきてくれて、それに家臣の皆さんの前での政宗のからかいが恥ずかしくて、困っていたのも気付いていたんだ。
私は政宗にぎゅっと抱き着く。
「…政宗…ほんと、かっこよくて…大好き」
私の言葉を聞くか聞かないで政宗が私のあごをすくい、口付けをしてきた。
本当に貴方には敵わない、でもいつか、政宗の隣に立つにふさわしい女性になるからね。
<終>