<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第2章 猫さん ― 顕如&三成 ―
「やはりここにいましたか」
ざりっと石を踏む音がし、高めの声がする。
紫を数滴落とした灰色の髪に、紫の瞳。
件の石田三成がすっきりと立っていた。
「『猫さん』がいないので、たぶんここだと思ってきましたが…当たりましたね」
「何用だ」
私は『猫さん』をおろすが、私の足元をすりすりとすり寄って離れない。
石田三成の紫の瞳が柔らかく細められ、『猫さん』を見つめる。
「貴方は私が思っている程、悪い人ではないのですね」
「どういう事だ?」
石田三成は牢の前に立ち、私と猫を交互に見つめる。
「『猫さん』ですよ。
貴方が邪険にするならそう出来るいきものに、むしろ優しく接していられた。
『猫さん』もわかっているから、貴方にそうしてすり寄って離れない。
どうしてそんな優しさをお持ちなのに、同胞を使って信長様を襲ったのですか?」
私は片頬をゆがめて吐き捨てるように言う。
「何度も言ってきたはずだ。私は信長に全てを焼き尽くされた。
同胞が殴られ、襲われ、殺される姿を、何十、何百と見た。許す事は出来ぬ。
私は、私の代わりに死んでいった同胞達の為に復讐鬼となったのだ」
私は一度言葉を切り、再度吐き捨てるように言った。
「…しかし、私を未だ処刑せぬのは、信長は新しい世を作って、私に見せる気らしいな」