第237章 White special day　― 武将＆姫 ―

＜幸村の場合＞

「ったく、どうして俺たちが安土城に来て、舞をもてなさないとならないんだ」

ぶつぶつ言いながらも幸村は開けた障子の前で呆然としている舞を迎えに近くに寄り、片手を差し出して舞の手を取ると案内して座らせた。

「ね、ねぇっ、どうして幸村たちが安土城に…？」

ようやくはっとした舞が、幸村に何故安土城に居るのか問うと、幸村は口をへの字に曲げて答える。

「佐助が考えたんだよ。舞へのホワイトディとやらの御礼に安土城でくらぶ乱世をするって」

「くらぶ乱世…あのぅ、意味、わかってる？」

おそるおそる幸村に意味がわかっているか、と問うと、首を横に振って幸村はまゆをひそめた。

「全くもって意味がわからねぇ。でも、舞をねぎらう催しって聞いたからおまえをもてなして甘やかす。ほら、飲め」

杯を手にし舞に持たせると、幸村はおちょこを持ちとくとく…と酒を注いだ。

「私ばっかり悪いから幸村も飲んでよ？」

「そんな事言って…俺が酔ったら、おまえを甘やかしてやれねぇだろ？」

幸村の熱い眼差しが舞を射止め、舞は情欲の灯りつつある幸村の瞳に気付く。

「…幸村なら…何をどうされても良いけど…」

舞の言葉に幸村は耳まで顔を赤くし、そして「だったら遠慮しねぇ」と自分でも杯に注いで一気に口にし出し、舞は今夜は幸村に甘やかされて眠る事は出来ないだろうな、と小さな期待に満ちた甘いため息を静かにつくのだった。


＜終＞