<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第236章 こだから温泉 ― 姫&幸村 ―
「ここ、子宝が授かる湯として有名なんだってさ」
照れくさそうに幸村が言い、私はその言葉を頭の中で繰り返し、やがて言葉の意味に気付いて驚いて声が出ない。
「こっ…こだから…それって、まさか…」
「そういう事だよ」
そっぽを向いて答える幸村の耳も赤く、きっと私の顔も相当赤らんでいるだろう。
どうも信玄様が夫婦になった私たちに、早くこどもが出来るようにと幸村にここを教えてくれたらしい。
「お館もやってくれるよなぁ…」
とぼそりと幸村は呟くけれど、でも、連れてきてくれたってことは、幸村はここがどういうところか知っていたって事だよね…?
私の突っ込みに口に片手をあてた幸村は「まぁ…その…何があるのか…知らないとなぁ…」とむにゃむにゃと曖昧に答える。
何だか信玄様と幸村にしてやられた感は残るけれど、温泉は久し振りだからそれを楽しもうかな、と私は苦笑する。
「温泉自体は久し振りだから、お湯を楽しむからね」と言ってやると、幸村は「ま、そうだよな、うん」と独り言ちながら頷いていたものの、私を後ろから突然抱き締めてきた。
「温泉楽しむのは構わないけど…のぼせるなよ?俺も思いっきり舞の事、甘やかしたいからな?」
突然そんな事を言われると、心の準備が出来てないからどきりとしてしまう。
幸村からもらう甘やかし、きっとおとこらしくて激しくて、甘いどころか気が飛ぶ程の愛されかたなんだろうけれど、何だかそれも嬉しくて心の中がどきどきしてくる。