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<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹

第236章 こだから温泉 ― 姫&幸村 ―


「ねぇ、どこまで行くの?」

「おー、ちょっと遠くだ」

幸村が私を前に乗せて馬を走らせる。

軽やかに撥ねるように走る馬の背は慣れなくて怖かったけれど、今はすっかり慣れて一人でも乗れるようになってはいるのに今日は幸村が乗せてくれている。

幸村の腕に包まれるのは、なんだかんだ言っても安心をもらっているなぁと思い、でもそれを幸村に伝えると目元をほんのり赤らめて、照れくさそうに「おー」と言っておしまい。

幸村らしいとは思うものの、でも、もうちょっと言葉が欲しいな、と思うのはわがままかもしれなくて、だから何も言わない事にしている。



「もうちょっとだからがんばれ」

ぼんやり考え事をしていたのを疲れたのと勘違いしたのか、幸村は後ろから私を抱き直しながら声を掛けてくれた。

「あ、ううん。考え事をしていただけだから大丈夫だよ」

「そうか?我慢するなよ?」

幸村なりのぶっきらぼうでも優しい言葉。

「ありがとう。本当に疲れたらちゃんと言うね」

「おー」

遠くからのどかな鳥のさえずりが聞こえる晴天の中、私たちの馬だけが走る音が聞こえる。



そしてようやく到着したのは山のふもとの小さな宿。
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