<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第233章 Speak Low ― 姫&顕如 ―
「顕如さんのせいです…っ」
思い切って言うと理由がわからないのか、顕如さんはぽかんとその手を止めて私を見つめる。
「門徒のかたに言われました。私が顕如さんのお相手になってくれたら嬉しいって。私も顕如さんといつまでも一緒にいられたら嬉しいです…っ」
私の告白にしばらく動きを止めた顕如さんは、しばらくしてゆっくり手を自分の膝に置いて私の顔を覗き込む。
「おまえは…舞は私の側に居たいと言うのか。私は鬼であるにも関わらず…」
「顕如さんは鬼じゃありません。優しすぎるくらいです。私はそんな顕如さんを支えたいと思っているんです」
私はここまで言ったから、と最後まで自分の気持ちを伝える。
私たちの間にしばらくの無音。
そして急に顕如さんの腕が伸びて、私を抱き締める。
「舞…自分の時代へ戻らず、私とともに生きてくれるというのか…?」
「はい…顕如さんと一緒に居たいです」
顕如さんの大きなからだに包まれながら私は自分の気持ちを伝える。
「舞…私は一人で鬼となって屍を踏み越え、織田信長を殺すためだけに生きてきた…そんな私でも良いというのか…」
「顕如さん、一人で苦しみを抱えないでください。私にもわけてください。貴方の苦しみも悲しみも、私も一緒に背負います」
私の言葉に顕如さんは大きくため息をつき、私の顎に指をかけ顔をあげさせると、顕如さんの端正な顔が近付いてきた。