<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第233章 Speak Low ― 姫&顕如 ―
顕如さんの心をもっと知りたい、感情の奥底に眠る本心をもっと知りたい、私は何だかんだと理由をつけて顕如さんの仮住まいへ足を運ぶ。
「また来たのか」
顕如さんはまゆをひそめて私を迎えるものの、邪険にはせずいちおう私と会話はしてくれる。
そのうち顕如さんの門徒のかたとも話しをするようになり、彼等の顕如さんに対する深い信仰を知る事となる。
「舞様は顕如様をお慕いしているのでしょう?」
門徒の女性からそっと聞かれて、初めて自分の心に気付いた私は鈍感なのだろうか。
「…そ…そうかな…」
照れるように反対に聞き返すと、その女性はにこにこして私に言ってくれる。
「舞様のように身分に分け隔てなく接してくださるかたなら、顕如様のおちからになってくださると思います。私はお二人が一緒になってくださったら嬉しいです」
「あ…いやいや…それは大袈裟です。顕如さんのようなおとなに私のようなこどもは似合いませんよ」
慌てて否定するものの、その女性は首をかしげる。
「そんな事有りませんよ?舞様の心のお優しさは誰もが存じてますし、顕如様のお相手に相応しいと誰もが思っております」
恥ずかしくなってその場を理由をつけて離れたものの、それから顕如さんに会う時にこの事を思い出して一人顔を赤くしてしまった私がいた。
「どうした?顔が赤い。熱でも出ているのか?」
顕如さんの大きな手のひらが私の額に触れ、私は心臓のどきどきが止まらない。