<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第233章 Speak Low ― 姫&顕如 ―
低く凛とした声が私の耳に流れ込む。
「舞…本当に良いのか…留まるなら今のうちだが…」
「良いんです、私は…顕如さん…貴方が欲しい…」
その声を皮切りに顕如さんのからだが私に沈み込んだ。
顕如さんと知り合って何度か偶然とはいえ、助けてもらったり会う事が多くなるにつれて、顕如さんの持つ信長様への憎しみがどんなものかわかるようになっていく。
けれど、それ以上に悲しみを背負い、自分を追いつめていく姿に私は強く惹かれ、何とかちからになりたいと思うようになるのに時間はかからなかった。
「おまえの時代では戦は無いのか?」
顕如さんには早い時期に500年後の時代から来た事は話してあったものの、それを信じてくれているのかはよくわからなかった。
「はい、ありません。小さないざこざは有りますけれど、平和な世の中です」
「だろうな…おまえのその呑気さを見ていると、おまえの居た世は平和なようだ」
「あのう…私が先の時代から来たのを信じてくれるのですか?」
顕如さんとの会話から、私の話しを信じてくれているのかと聞いてみる。
「信じるも信じないも、おまえがそう言うのだからそうなのだろう?それともおまえは私に嘘を教えたという事か?」
「あ、いえ…嘘は言ってません」
「であればそれが事実だ」