<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第232章 両思い ― 秀吉&姫 ―
俺が無言になって立ち尽くしていたらしく、舞が不安気な表情になってこちらを見ていた。
「秀吉、さん…?あの…だい、じょう、ぶ…?」
目の前で手をひらひらと振られ、はっと今の状況に気付き、慌てて舞に笑いかける。
「あぁ…ちょっとぼんやりしてた。大丈夫だ…さ、今から俺は軍議だが舞は針子部屋へ行くか?」
「うん、作り方のわからないところがあって、聞きに行こうと思ってたんだ」
「そうか、無理するなよ?」
「大丈夫だよ、秀吉さんもがんばってね」
互いに言葉を掛け、安土城の中で行く部屋へ向けて分かれるものの、「舞」と俺は離れがたく声を掛けて立ち止まらせる。
「どうしたの?秀吉さん」
立ち止まり振り返る舞に近寄り、俺は舞の額に軽く口付ける。
「ちょ…どうしたの?」
ようやく戻った顔色がまた赤く染まる舞に、俺はくすりと笑って言った。
「今日一日がんばれるおまじない、とやらだ」
「ん、もう、秀吉さんたら…お返し」
突然、着物の衿を引っ張られたと思ったら舞の顔が近付き、唇に柔らかいものが触れる。
「…舞」