<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第228章 いつか、望んで。 ― 光秀&姫 ―
俺は前を見たまま答えるが、舞の返事は俺の想像とは違っていた。
「私、光秀さんのお傍にいたいんです」
「ほう、俺の側にねぇ」
俺ははぐらかすように返すが、舞の言葉は意外なものだった。
「本気です。私、この数日光秀さんと一緒に居ながら考えたんです。つかみどころのない光秀さんは、わざとそうしているのだ、と。自分が誰よりも危険な仕事を背負うから、人と深く接すると自分に何かあった時、その人が悲しまないように、だから浅い付き合いで常に終わらせようとしているのだと…違いますか?」
俺の事をこの数日でかなり観察したな、と舌を巻いた。
確かに俺は安土の中でもかなり危険な任務を負う事がほとんどだ。
だからどこで死んでも良いように、しがらみは極力持たないように生きてきた。
しかしそれを数日一緒にいただけの娘に看破されるとは思わなかった。
俺は小さく「くくっ…」を笑い、手綱を軽くぱしんと馬に当てる。
馬は少し速度をあげ、俺の前に乗っている舞はその反動で、俺にからだを完全に預ける体勢となった。
「わっ」
驚く舞に俺は馬を駆りながらわざと知らん振りをして言う。
「ゆっくり走らせすぎた。戯言は終わりだ。安土へ早く戻るぞ」
「ちょっ…光秀さん、いきなりは止めてください…っ」
掴まるところに困って、舞は俺のからだにしがみつく。