<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第227章 優雅な愛 ― 姫&義元 ―
「俺の泊まっている宿屋だよ。買ったものはそこへ運んでもらっているんだ」
そしてまた手を繋いだまま、義元さんの宿泊している宿屋へ連れて行かれた。
「さ、ここだよ」
襖を開けて、義元さんは私を中へ入れてくれる。
「失礼します…」
小さく挨拶して中へ入らせてもらうと、部屋の真ん中に届けられたものらしい、風呂敷に包まれたものが置いてあった。
「ああ、全て届いているね」
義元さんは嬉しそうに側に座ると私にも座るように促し、ひとつずつ包みを解き出した。
蒔絵の美しい硯箱、達筆な字が書かれた掛け軸、平安貴族の絵が描かれた絵巻物…安土城で暮らす私ですら見た事の無い、美麗なものが表れる。
「すごい…こんなの見た事ない…」
私のつぶやきに義元さんはふわりと微笑む。
「そうか。安土城で暮らす舞ですら見た事ないんだね」
そして義元さんは一点ずつ手に取ると、細かくそれらについて説明してくれる。
その表情はとても真剣で、美しいもの、現代で言うならば美術品がとても好きなんだな、というのがよくわかった。
そうだ、私はすっかり大切な事を忘れるところだった。
「あの、義元さん、明日、お誕生日ですよね?」
私の言葉に目を見開く義元さんは驚いたようだった。