<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第227章 優雅な愛 ― 姫&義元 ―
「義元さん、お久し振りです」
市を歩いていて、見た事のある後ろ姿にまさかと近寄ってみると、そこにはふわりと音もなく市を眺め歩く今川義元さんがいた。
優雅で品のあるたたずまいに、周りの町娘さんたちも声を掛けたいけれど掛けられないという様子がありありと分かる。
「やぁ、舞じゃない。元気だった?」
ふと、こちらを振り向いた義元さんが私に気付き、声を掛けてくれる。
そして冒頭の挨拶を私はした。
「義元さんはどうして安土に?」
一緒に市を歩く事になって、隣を歩く義元さんに聞くと、男性でありながら咲く花が恥じらうような麗しい笑みを浮かべる。
「ほら、ここには、春日山には無いものがたくさんあるからね。美しいものを探すには、今の日の本では安土が一番なんだ」
「…そうなんですね…もう、何か気に入ったものはありましたか?」
私が聞くと、義元さんは首を少し傾げて私の顔を覗き込む。
「俺の買ったものに興味が有る?嬉しいな、舞に見せてあげるよ」
私の手をとり、繋ぐと、義元さんはどこぞへ私を連れてゆく。
「あの…どちらへ…?」
私の戸惑いに気付いたのか、義元さんは一度足を止め教えてくれる。