<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第224章 動きだす恋 ― 姫&蘭丸 ―
「舞様、何?俺のこと、じっと見つめて?」
拾ってくれた本を差し出しながら、笑う蘭丸くんにちょっとどきりとしながら答えた。
「ううん…蘭丸くんの仕草が優雅だなぁって。どうしてそんなに動きが綺麗なの?」
私の問いに目を丸くする蘭丸くんは、すぐくすりと可愛い笑みを浮かべる。
「なんでだろうね。俺はそんなに育ちが良い訳でも無いけれど。それに仕草がどうこうなんて言われた事が無いよ」
武士だから、ひとつひとつの所作がきちんとしていて、そういうところが綺麗に見えるのかな。
そんな事を考えていたら、気付く、蘭丸くんの誕生日。
「ねぇ、蘭丸くん、そういえば誕生日近いよね?」
私に聞かれて、蘭丸くんも初めて気付いたような表情を見せる。
「あ…そういえばそうだね。すっかり忘れてた」
「何かお祝いしたいな。何かして欲しい事、ある?」
あんまりおおきいものを作る時間はないけれど、小物くらいなら作れるかな、と考えを巡らせていると蘭丸くんから逢瀬のお誘いがきた。
「んー、じゃあね、舞様と一日一緒に出掛けたいな。駄目かな?」
顔を少し横に傾けてさらりと流れる茶色の髪の毛が、光を反射して淡く輝く。
「私と?一日?」
「うん、茶屋で甘いものを一緒に食べたり、近くの湖で散歩したり。そんな事で良いんだけど駄目かな」