<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第221章 陰陽師のひみつ ― 光秀&姫 ―
光秀は片頬で笑みを浮かべながら舞に問う。
「…はい、初めて入りました」
「この部屋は俺と妻の寝所として使う予定の部屋だった」
「…つま?妻って奥さんの事ですか?」
驚いて大声をあげる舞に、光秀はうるさいと言わんばかりに少し顔をしかめる。
「光秀様に奥様がいらしたなんて初めて聞きましたし、今迄お目にかかった事がありませんけれど、いらっしゃるなら挨拶させてくださいよ!」
慌てる舞の唇に、光秀は人差し指をぴたりと当てる。
「うるさいから少し黙ってろ。俺に妻女がいるように見えるか?」
人差し指で口を塞がれ、光秀の質問に首を左右に振る舞。
「俺には許嫁がいたが、その娘は婚儀直前に流行り病にかかって死んでしまった」
その瞬間、舞は目を見開く。
現代なら医術で治せる、いわゆる流行り病も、この時代では医術というものはなく、祈りで病を治せると思われている時代だった。
「このような仕事をしていると、なかなか嫁の来てがなくてな、そのまま俺は一人身だ」
光秀には許嫁が亡くなって気の毒ではあるものの、何故、自分がこの部屋に閉じ込められたのか、未だ理解の出来ない舞だった。
首を傾げて舞はその事を光秀に問うと、光秀は一瞬間を置いた後、くつくつと笑い出した。
「朱雀も大変だな。これだけ鈍感な娘を相手にしているのだから」