<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第218章 貴方へ堕ちる ― 姫&光秀 ―
そんなにヤワじゃないんだけどな、と思いつつも光秀さんの香りのするそれを纏っているだけで、なんだか光秀さん自身に抱き締められているような感覚もして、つい自分の顔が赤らんでくるのがわかる。
「どうした?顔がずいぶん赤いぞ。冷えて熱でも出たか」
光秀さんの少し心配したような顔が間近く迫り、反対に私は一歩後ろに下がってしまう。
「い、いえ…大丈夫です。熱は出てません…」
私の様子に何か思うところがあったのか、光秀さんはくっと口の中で笑って、こちらへやけに色っぽい眼差しを送ってくる。
「おまえが俺の上衣の残り香から、俺に何かされているのかと思ったのだが、そういうのも違うのか」
うわ、ず、図星じゃない、光秀さんは勘が鋭すぎるよ…!
私は無言で光秀さんを睨むように顔を見る。
「何を怒っている?でもまぁ怒っているおまえの顔も可愛いものだがな」
光秀さんには敵わない、何をしても何を言っても、全て含めておとなな言葉が降ってくる。
「…光秀さんはずるいです」
私がようやく言葉を出すと、光秀さんは「おや?」と言った表情をみせる。
「私が何を言っても何をしても、全てを含めて知っているような、そして、私を嬉しがらせるような事しか言わないんですもの」
「ほう…おまえには俺がそう思えるのか」
私が精一杯の抗議では無い抗議をすると、光秀さんは妖艶に微笑む。
「俺をおとなと思うなら、おまえをこのままおとな扱いしてやろうか」