<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第205章 恋の楽しみは後で。 ― 佐助&姫 ―
「の…のぶたん…」
俺は言葉が出ず、更に一瞬考えてしまう。
織田信長がのぶたんなら、謙信様はけんたん?信玄様はしんたん?ゆきはゆきたん?
ゆきたん、可愛すぎる、と俺は一人で吹き出してしまい、舞さんはきょとんとする。
「ああ、ごめん」
そうして今の事を話すと、舞さんも笑いだす。
「やだぁ、ゆきたん、可愛い!」
それにしてもまかり間違っても戦国武将にのぶたんのネーミングはすごいよ、と俺が言うと舞さんはそうかな、と小首を傾げる。
「信長様も笑ってくださったよ?」
んー、たぶんそれは苦笑していたんだと思うけれど、舞さんの無邪気な表情を見ていると、余計な事は言わないのが一番だな、と思う。
「きみは信長様始め、安土の武将たちに愛されていて…俺はちょっと妬けるな」
めがねのつるに触れながら少し本音を伝えると、みるみるうちに舞さんは赤くなる。
「や、やだ…なぁ…佐助くんたら…妬けるなんて…嬉しくなっちゃうじゃない…」
反対に俺がぽかんとすると、舞さんからまさかの告白。
「現代からきて不安な毎日を、佐助くんのアドバイスで乗り切ってきたんだよ。私が今、こうしてここにいられるのは佐助くんのお陰。そんな佐助くんにいつの間にか…そのぅ…」
もじもじし出した舞さんを見て、俺は彼女の唇に人差し指を当てる。
「続きは俺に言わせて。こういうのはおとこがやるものだよ」