<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第205章 恋の楽しみは後で。 ― 佐助&姫 ―
「佐助君、そろそろ誕生日だよね?」
「よく覚えていてくれたね。もうすぐ一歳年寄りになるよ」
俺が肩をすくめながら言うと、舞さんは「やだぁ」と言いながら笑う。
良い笑顔だな、俺は彼女のこの笑顔がいつでも見たいし、守りたいと思う。
「誕生日に会えるかわからないから、先に渡しちゃうね」
文机に向かった舞さんは、置いてある硯箱を開けて何かを取り出し、俺の前に座る。
「はい、佐助くん、お誕生日おめでとう」
俺の目の前に現れたのは、俺と同じ衣装を身に着けた熊のぬいぐるみ。
「俺と同じ衣装だな。もしかして舞さんが作ったの?」
驚いて聞くと舞さんは頷きながら答えてくれる。
「うん、でもそんなに難しくなかったよ。敢えて言うならその鎖帷子(くさりかたびら)がちょっと大変だったかもしれないかな」
そう言われてよく見ると、鎖帷子の部分は斜めの細かなダイヤ柄の刺繍が施されている。
「ああ、これは大変だったと思うよ。本当にありがとう、大切にする」
俺はふところに熊のぬいぐるみをしまう。
「ちなみにその子、佐助たんって言うの」
「さすけたん?」
そのネーミングに驚くが、舞さんはさらりと言う。
「信長様にもくまたんをプレゼントしてるけど、のぶたんって言うんだよ」