<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第201章 この男、惚れれば。 ― 姫&光秀 ―
「あ、はい…」
返事をして光秀さんの火縄銃を構える姿を見る。
本来は片膝をついて撃つものを、光秀さんはすらりとした長身で立ったまま構える。
こくりと私の喉が鳴り、そよりと風が光秀さんの着物の裾を揺らした。
その風が止まると同時に光秀さんの火縄銃が音を立て、的が…割れる。
「わ…当たった…!」
私が驚いて的の方向を見ていると、光秀さんはちらりと私を見て当然と言わんばかりに笑みを浮かべ、銃を水桶に突っ込み熱を冷ましている間に私を伴い的へ向かう。
的の真ん中に命中した跡があり、そこから左右に見事に的が割れている。
「わ…すごい…」
私がぼそりと呟くように言うと、光秀さんは的を外しながら言う。
「これくらいの距離を当てられないなら、銃なぞ使わないほうが良い」
割れた的を手にして光秀さんは銃のほうへ歩き出すので、私も慌てて追いかける。
少し後ろへついて歩くと、光秀さんは平静と言う。
「どうだ、生き抜くためにおまえも銃を使ってみるか?」
「は…え…?いや…私は、遠慮、します…」
光秀さんの突然の申し出にびっくりし、でも銃を使うなんて考えられないので断ると、光秀さんはもともと拒否の返事があるのは理解していたように口を開いた。
「ま、おまえの返事はそうだろうと思っていた」