<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第195章 貴方を望む ― 姫&秀吉 ―
「…そう、なの…ですか…?」
問われて私は、姫の気持ちが痛い程わかるので、答えられなくなる。
「違います、よね?秀吉様の許嫁、じゃない…です、よね…?」
重ねる姫の言葉は震えて、否定したい気持ちが大きいという事を表していた。
ああ、貴女も秀吉さんを愛しているのね。
そんな気持ちが沸き起こり、でも発言を否定しないこのままでは、秀吉さんは姫のものになってしまう、そんな時、襖が開いて一番会いたかった人が立っていた。
「失礼します」
頭を軽く下げて入ってきた秀吉さんは、真っ先に私に気付き声を掛けてくれた。
「舞、迎えに来てくれたんだってな。悪かったな、元気だったか?」
ああ、いつもの秀吉さんの笑顔だ。
私は涙が出そうになるのを我慢しながら、うん、うん、と頷くだけで精一杯だった。
その私たちの様子で大名と姫は全てを察したらしい。
姫は唇をぐっと噛むような表情をし、大名は軽く姫の肩を叩いた。
「秀吉様には、こんな素敵な許嫁がいらしたなら、このように迎えにいらしたのだし、お帰りになられたほうがよろしいようですな」
大名の一言で秀吉さんの帰還がきゅうきょ決まり、大急ぎでその支度が行われた。
「秀吉様と幸せになってくれなかったら…許さないから」
大名の姫から最後に言われた言葉。