<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第195章 貴方を望む ― 姫&秀吉 ―
慌てふためく私を見て、信長様は珍しく破顔する。
「貴様、自分がどれだけ感情が顔に出るかわかっていないようだな。貴様の考えなぞ軍略を考えるより簡単だぞ」
「ええっ…と…」
「とにかく今すぐ織田家ゆかりの姫君として、ついでに許嫁として、秀吉を迎えに行ってこい。これは命令だ」
信長様はすくっと立ち上がると広間を去り、入れ替わって女中さん達が入ってきた。
「舞様、お召し替えいたしましょう。秀吉様をお迎えにあがられると伺っております」
女中さん達に部屋へ連れて行かれ、姫君として打ち掛けを纏う姿に装う。
慣れない打ち掛け姿によろりとしながら輿に乗り、しずしずと一行は秀吉さんの滞在する大名屋敷へと向かった。
「先払いより織田家ゆかりの姫様がお越しになると伺っておりました」
私の前に現れた大名は、物腰落ち着いた穏やかな人柄の良さそうな人だった。
そして隣に座るのは、私とそう年の変わらない、綺麗なというより可愛いという表現がぴったりな、小柄で可憐な姫様だった。
「秀吉様のお見舞いにいらしたと伺ってますけれど、秀吉様は私がしっかり看病して差し上げてますので姫様がいらっしゃるほどではないと思いますけれど…」
どうして私が来たのか納得出来ない様子の姫に、大名は言う。
「こちらの姫様は、秀吉様の許嫁だそうだよ」
初めてその言葉を聞いた姫は、父親である大名の顔を目を丸くして見やり、そしてその驚いた表情のまま、ゆっくりと私のほうを見た。