<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第195章 貴方を望む ― 姫&秀吉 ―
嫌だよ、秀吉さん、他のおんなの人と結婚しないでよ。
どうしてちゃんと気持ちを伝えておかなかったんだろう。
後悔の涙が後から後から溢れて私はその日、眠る事が出来なかった。
翌日、信長様に呼ばれた私は、どうしても直らない腫れた目のまま、足を向ける。
信長様は私の顔を見て眉をひそめたけれど、何も言わなかった。
「貴様、秀吉のところへ行く気はあるか?」
信長様から言われたのは意外な言葉だった。
「秀吉さんのところって言うのは…?」
私の問いに信長様はにやりと片頬で笑って言った。
「あやつが今、療養している先は懇意にしている大名の邸だが、そこの姫がたいそう秀吉に執着しているらしい。秀吉が助けを求めてきた」
「助けってどういう事ですか?」
意味がわからずぽかんとする。
「たわけ。言い寄られて困っているから貴様に来て欲しい、と暗に言ってきておるのだ」
「…私に?」
「貴様、秀吉を好いておるのだろう?秀吉も貴様を悪くは思っていない。だから貴様が大名の邸へ行って、秀吉の許嫁として秀吉を迎えに行ってこい」
頭が回らずしばらく信長様の言葉を反芻し、意味がわかって顔から火が出たように赤くなるのがわかった。
「えーっと、それは、あーっと、どうして、それを…」