<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第195章 貴方を望む ― 姫&秀吉 ―
落ち着かない私は、もう一度信長様に聞きに行こうと部屋を出ようとすると、廊下を歩く家臣の人達の会話が耳に入った。
「秀吉様はなかなか体調が戻られぬようだな」
「いやいや、それがもう治っていらっしゃるようだが、戻れないらしいのだ」
「どういう事だ?」
「療養していた大名の姫様に好かれたらしく、秀吉様もまんざらでないようだと聞いたぞ」
「ほう…では秀吉様はもしかしたら、その姫様を嫁御としてご一緒に連れて戻られるかもしれぬなぁ」
「町の娘たちがさぞ泣くだろうな、秀吉様の人気はそれはそれはすごいからな」
「ああ、そうだな」
嘘…うそ、でしょう?秀吉さんにお嫁さん…?
私は部屋の中で立ち尽くして、動けなくなってしまった。
頭の中を今の会話が駆け巡る。
確かに秀吉さんが好きになるおんなの人が居てもおかしくないよ。
私一人の片思いで秀吉さんに「好き」って言った訳じゃない。
でも、何となく、秀吉さんは私の気持ちを知っていてくれていると勝手に思いこんでいたかもしれない。
それにあぐらをかいて、きちんと気持ちを伝えなかったから、今こうして他のおんなの人が好きになってしまったのかもしれないな。
考えていたら、私の両眼から涙が溢れていた。