<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第190章 取り換えっこ ― 姫&秀吉 ―
怒りの矛先が秀吉に向いた。
「いや…ほら…まぁ何だ。あ、そうだ、舞、最近城下に新しく出来た茶屋、うまい団子を食わせるって聞いたんだ。今から食べに行くか?」
誤魔化されない舞は更に秀吉に噛みつく。
「お団子は後で良いです。それより説明してくださいっ。どうしてお二人で着物を取り換えて私をわざわざからかったのですか?」
「おい、舞、俺が秀吉に言ったのだ。舞はいつもと違う姿になった秀吉を、間違えないか確認したい、と」
「そんな…光秀さん、ひどい…髪の毛見えなかったから、秀吉さんって気付かなかったもん…」
口を咎らせる舞に光秀はぴしゃりと言う。
「おまえ、いつも秀吉が同じ格好をしていると思うな。敵方の探索には、筵(むしろ)を巻いて、物乞いのような恰好をする事だったあるんだぞ。そんなやつが城や御殿に入ってきて、気付かず追い払おうとするのか。秀吉だっていつも同じ格好をしていると思うな」
「…わかりました…気を付けます」
唇をかみしめるように答える舞に、光秀は表情を和らげて頷き、舞をぽんと軽く撫でた。
「わかれば良い。秀吉、どうする?面白いから今日は互いにこの姿でいるか?」
「いや、着替えよう。三成あたりが絶対間違えて、違うと言っても間違えていそうだ」
秀吉の言葉に想像した舞は、ぷっと吹き出す。
「秀吉さん…三成くんに悪いよ…」
「いや、あいつの事だからきっと違うと言ってもずっと、光秀様と言ってきそうだ」