<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第17章 東大寺 ― 姫&安土城武将 ―
政宗は当然だけれど、信長様も所作が綺麗だな、と見惚れてしまった。
皆、無言で香炉が回ってくるのを待っている。
直接聞くのが回ってくるのも楽しみだけれど、部屋に漂い流れる香りも楽しむ。
伽羅ってこんなに甘やかで涼やかで清しい(すがしい)香りなんだな…
そして私の順番が回ってくる。
隣の三成くんが、小声で香炉の扱いを教えてくれるので、その通りに扱い、香を聞く。
香木が焦げもせず、かぐわしい香りを湛えて、香炉にちょこんと乗っている。
その香りを鼻からそっと、でも精一杯からだに移し込む。
自分のからだが蘭奢待に染まるような気がした。
香炉を政宗に戻すと、信長様がにやりとしたまま、私に問う。
「どうだったか、舞。蘭奢待の香りは?」
「はい…甘くて、涼しくて、清らかな…一言で言い表せない香りでした…」
どういって良いのかわからないので、自分の思った感想を述べる。
「甘くて涼しくて清らかな香り、か」
秀吉さんが感心したように頷く。
「まぁ、舞にしては、良い感想じゃない?」
家康がたぶん褒めてくれた。
「蘭奢待は東大寺と言うのだが、何故かわかるか?」