<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第17章 東大寺 ― 姫&安土城武将 ―
「こんなところに突っ立って、中へ入れないのか?」
三成くんの更に後ろから、光秀さんが艶やかな低い声を掛けてくる。
「あ、失礼いたしました、どうぞ皆様、お先に」
三成くんが脇へよけると、家康と光秀さんが中に入り、続いて三成くんが部屋に入ってきた。
「部屋の前で何をやってたんだ」
光秀さんが不敵な笑みを浮かべて、私を見る。
「なんでもないですよ」
慌ててごまかすけれど、光秀さんは気付いているんだろう、な。
そして、秀吉さんと信長様もいらして、香を聞く支度が整った。
政宗の隣に信長様、秀吉さん、光秀さん、家康、三成くん、私、と四角に座る。
組香ではないけれど、蘭奢待に敬意を表して、と、政宗はお点前を披露してくれる。
袱紗(ふくさ)を畳んだり、巻き付けたり、政宗の真剣な表情がかっこいい。
そして、香炉にそっと蘭奢待が置かれ、政宗がひと聞きする。
とっても小さな香木なのに、ふんわりと漂う伽羅の香り。
香木を聞いた事は勿論ないけれど、淡い香りが部屋にゆったりと流れる。
政宗が香炉を回して、信長様の前に置き、信長様は香炉を手にし、香りを聞く。